爆発的なパワーの獲得方法! プライオメトリクスとは何かを世界一わかりやすく解説する
はじめに
アスリートが爆発的なパワーを鍛えるために最も有効な手段は、プライオメトリクストレーニングである。
プライオメトリクストレーニングは、それ単体で神経系に影響を与えるだけでなく、ウェイトトレーニングと組み合わせることで、さらに効果的に爆発性を高められると言われている。
プライオメトリクストレーニングの簡単な原理をわかりやすく説明してみる。
原理
弾性エネルギー
バネやゴムは弾性体といい、伸ばされたり(弾性変形)しても、元に戻る力(復元力)が働く。ゴムが筋肉により近いので、ゴムを例に考えよう。ゴムは引っ張った後に手を離せば、元に戻る。このとき、引っ張って伸ばされている状態ゴムには、なんらかのエネルギーが溜まっていると考えられる。これを弾性エネルギーと呼ぶ。
ゴムは伸ばせば伸ばすほど勢いよく元に戻ろうとする。つまり、弾性エネルギーは、距離に依存し、変形の長さが大きければ大きいほど、蓄えられるエネルギーが大きくなる。実際、筋肉の伸びと、それにより発生する元に戻ろうとする力の大きさは、直接的な比例関係にあると言われている。
ストレッチ反応
ここで、ストレッチ反応という現象を説明しておく必要がある。
「筋肉は、安静時の筋肉の長さから少しだけ伸ばされている状態で最大筋力を発揮する」
という反応である。この少しだけ伸ばされている状態をストレッチ状態と呼ぼう。
(筋繊維が、安静時長よりも少しだけ伸ばされているときに最大張力を発生させる筋肉の特性)
伸張と収縮
また、筋肉の力の発揮の仕方には、伸張、収縮、等長の3種類が存在し、そのうちの伸張、収縮について知っておかなくてはいけない。
ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)を例にとろう。想像してみてほしい。俗にいうアキレス腱ストレッチをすると、ふくらはぎが伸ばされる。この際、ふくらはぎは筋力を発揮しながら伸ばされる。これが筋肉の伸張である。周りからの力に抵抗しつつも、外力に打ち負けて、伸ばされてしまう状態である。
逆に、ふくらはぎの収縮は想像しやすいだろう。垂直跳びをする際に、ふくらはぎは収縮する。
プライオメトリクスの基本コンセプト
ここまで準備したところで、プライオメトリクストレーニングの基本コンセプトを提示する。
「反射的な反応を引き起こすには、筋肉をストレッチ状態にした上で、伸張から収縮へと活動させること」
これが大まかなコンセプトである。
素早さ
次に、時間的な考えを取り入れよう。先ほど話したように、筋肉は弾性体であり、伸張状態では、弾性エネルギーを蓄える。そのエネルギーを、収縮しながら発揮するのだが、伸張状態と収縮状態の切り返しの時間が長ければ長いほど、弾性エネルギーを熱として失うことになる。
考えてみてほしい。階段のステップの先端に立ち、ジャンプする。端につま先だけ着地すると、勢いでかかとはさらに下に下り、ふくらはぎは伸張される。そこから、再度高く飛び上がることを考えた時、着地してから一息ついてから上に飛ぶのと、着地してすぐに上に飛ぶのでは、後者の方がエネルギーロスが少ないだろう。伸張から収縮への切り返し時間が短い方が、蓄えた弾性エネルギーを有効活用できるのである。
弾性エネルギーを決める要因として、伸ばされる長さと、伸張から収縮への切り返し時間の二つを紹介した。研究者たちは、伸ばされる長さより、切り返しの時間の短さの方が重要であると考えている。
(しかも、素早さは切り返しの時だけでなく、伸張される際にも重要だという。伸張する時間が素早ければ素早いほど、弾性エネルギーが大きくなるという。)
プライオメトリクスの効果
プライオメトリクスによって鍛えられた神経筋システムは、わずかな筋繊維の変化に対して、素早く、そしてパワフルに反応できるようになる。つまり、素早さとパワフルさを備えるわけだから、爆発的な神経筋システムを獲得することになる。
まとめ
以上プライオメトリクスの説明のまとめとして、以下の式を説明して終わりにしよう。
Pはパワー。簡単な話、これが大きくなれば、より爆発的であると言える。
Fは力の大きさ。単純な話、低所からの落下よりも高所からの落下の方が、プライオメトリクストレーニングには最適である。
dは移動距離。トレーニングでは、小さな動きよりも大きな動きをした方が、より爆発的になる。(空間的オーバーロードの話だが、今回は割愛した)
t は時間。切り返しの素早さや伸張の素早さなど、時間は短い方が良い。
参考資料
『爆発的パワー養成 プライオメトリクス』2015年 大修館書店
著者)ジェームズ・ラドクリフ/ロバート・ファレンチノス
訳者)長谷川 裕